小原博樹は、岡本俊朗を回顧して、次のように書いていた。
さて、名古屋に帰ってくることになった彼が「考古学だけやっていると頭が悪くなるから運動を紹介してくれ」(彼独特のいいまわしですので誤解なきよう)ということで、数年の間、見晴台と差別撤廃運動で歩みを共にした(1)。
「頭が悪くなる」ことを「バカ」と言うならば、岡本の謂いは「専門バカ」批判のレトリックである。
私もこれをよく聞いていたが、職場の上司だった三輪克さんは、さらに、「専門バカではなくバカ専門」と言っていた。「専門をやっているとバカになるのではなく、バカが専門をやっているのである」と。名古屋大学の坂田昌一のもとで学んだ人らしく、〈理論的〉であった。
注- 小原博樹「韓国、朝鮮問題、差別撤廃運動と岡本さん」岡本俊朗追悼集刊行会編『岡本俊朗遺稿追悼集 見晴台のおっちゃん奮闘記─日本考古学の変革と実践的精神─』、岡本俊朗追悼集刊行会、1985年8月2日、179頁。↑