歴史修正主義郷土考古学

犬山市教育委員会編『史跡 青塚古墳発掘調査報告書』(犬山市埋蔵文化財調査報告書第1集)、犬山市教育委員会、2001年3月30日。
▲ 犬山市教育委員会編『史跡 青塚古墳発掘調査報告書』(犬山市埋蔵文化財調査報告書第1集)、犬山市教育委員会、2001年3月30日。

7年ほど前に、別のサイト(1)で若干触れた一件。リンクが切れて、コメントも意味不明になってしまったため、こちらで再掲する。

一言。犬山市長が「大きなサジッションを受け」た「指摘」、「歴史教科書は文字の発明を持って始まっているが実は文字の使用以前から豊かな古代史があるのだ(2)」の前段は捏造である。過去に私が使用したどの歴史の教科書も、文字発明以前から始まっていた。後段は言わずもがなで、どの教科書からもそのように読める。

捏造された誤謬を前提にして行論するのは詐欺であり、常識的事項をもし本当に知らなかったとすれば再教育、再教化が必要だが、この人は教育産業の人でもある。十分に承知した上での発言とみるべきで、わざわざ件の書を掲げるところに、この「あいさつ」の政治性、権力性がある。これをいただく本書の全過程および全関係者は、その政治性、権力性に連なる。そういえば、名古屋市長選で対峙した河村たかしも、同業の谷岡郁子も、この人を利用したことがあった。同類の歴史修正主義なのであろう。

これもまた、「職人の考古学」と「趣味の考古学」の一途をたどった国家独占資本主義段階の考古学、すなわち「国家によるナショナリズム高揚政策に呼応し、下からのファシズムとして、非科学的な考古学を導き出し、アジアへの侵略戦争へ積極的に協力することになる(3)」考古学の現実化である。急ぎ、ポストモダンとプレモダンが合した「歴史修正主義郷土考古学」と名づけておこう。

そして、ただいま喧しい、首相安倍晋三の歴史修正主義は(4)、一朝一夕に出来した事態ではなく、上に一瞥したような文化財保護の日常のなかで長らく培われてきた政治、経済、文化に支えられているのである。

  1. fische「MUSEUMSCAPE Random Musings » Too Jokin’」、2006年12月19日、http://kustos.ac/wp/?p=89(2014年1月18日)
  2. 石田芳弘「あいさつ」犬山市教育委員会編『史跡 青塚古墳発掘調査報告書』(犬山市埋蔵文化財調査報告書第1集)、犬山市教育委員会、2001年3月30日、1頁。
  3. 「見晴台発掘と僕達の考古学―「職人の考古学」≪「趣味の考古学」を止揚し、「大衆の考古学」を創造しよう!―」伊藤禎樹・犬塚康博・岡本俊朗・小原博樹・斎藤宏・桜井隆司・村越博茂・安田利之『見晴台と名考会に関する問題提起-その2』、1972年11月26日、6頁。
  4. “Mr. Abe’s Dangerous Revisionism – NYTimes.com”, http://www.nytimes.com/2014/03/03/opinion/mr-abes-dangerous-revisionism.html?smid=tw-share&_r=2(2014年3月4日)、「New York Times 3月2日の記事から (内田樹の研究室)」、http://blog.tatsuru.com/2014/03/03_1409.php(2014年3月4日)。
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