マルクス主義歴史学の系譜

1983年の岡本俊朗急逝後、2年をかけてつくった遺稿追悼集に、「日本考古学の変革と実践的精神」の副題をつけた(1)。これは、三澤章(和島誠一)の「日本考古学の発達と科学的精神(2)」の、いわゆる本歌取であり、提起したのは齋藤宏さんだったと憶う。辻内義浩さんだったかもしれない。

伊藤禎樹さんの『伊勢湾地域古代世界の形成(3)』は、藤間生大の『東アジア世界の形成』であろうか。

伊藤さんは、高校生の頃に「学校の図書館で出版されたばかりの藤間生大『日本民族の形成』に心を揺さぶられる(4)」ことがあったと書いている。

「このような問題を少くとも自覚的にとりあげたのは藤間生大氏の『東アジア世界の形成』だけではないか(5)」と評したのは石母田正であり、このような問題とは「「交通」を媒介とするこの「内」と「外」との相互関係、両者の相互転化と相互浸透の問題(6)」の、近代史と古代史とでの差異性の如何であった。

そして伊藤さんは、「政治勢力相互の戦争状態をも含む広義の交流である石母田正のいう「交通」の意義に思いをいたす(7)」とも書く。

マルクス主義歴史学の系譜がある。

  1. 岡本俊朗追悼集刊行会編『岡本俊朗遺稿追悼集 見晴台のおっちゃん奮闘記-日本考古学の変革と実践的精神-』、岡本俊朗追悼集刊行会、1985年8月2日。
  2. 三澤章「「日本考古学の発達と科学的精神」『唯物論研究』第60号、唯物論研究会、1937年10月1日、104-115頁、同「日本考古学の発達と科学的精神(二)」『唯物論研究』第62号、唯物論研究会、1937年12月1日、120-135頁。
  3. 伊藤禎樹『伊勢湾地域古代世界の形成』、株式会社アットワークス、2014年3月20日。
  4. 同「あとがきにかえて―わたしの考古学―」、同書、369頁。
  5. 石母田生「古代における「帝国主義」について―レーニンのノートから―」歴史科学協議会編『歴史評論』No.265、株式会社校倉書房、1972年8月1日、46頁。
  6. 同論文、46頁。
  7. 伊藤禎樹「はじめに」、前掲書、9頁。
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『伊勢湾地域古代世界の形成』を祝す

伊藤禎樹『伊勢湾地域古代世界の形成』、株式会社アットワークス、2014年3月20日、表紙・裏表紙。
▲ 伊藤禎樹『伊勢湾地域古代世界の形成』、株式会社アットワークス、2014年3月20日、表紙・裏表紙(部分)。

伊藤禎樹さんの著書『伊勢湾地域古代世界の形成』が20日に出版された。

掲載された論文は、発表当時にいただいた抜刷やコピーなどで接してきたものばかりだが、あらためて通読すると、伊藤さんの思想が貫徹するのを見る。近代が存在する。

そして、「あとがきにかえて―わたしの考古学―」で披露された、伊藤さんの歩みは特異である。帯の「尾張から照射する古代日本と東アジア/対峙するオワリとヤマト」に用いられた、二つの動詞が越境して言う。すなわち、伊藤さんの考古学は、職業研究者による官僚化した考古学に対峙し、堕落した現在を照射している、と。再演不可能な伊藤さんの考古学体験、その一部ではあるが、同行できたことは奇跡であり、幸運であった。

『伊勢湾地域古代世界の形成』を、心から、祝す。

〔書誌情報〕
伊勢湾地域古代世界の形成
イセワンチイキコダイセカイノケイセイ
著者名 伊藤禎樹 イトウサダキ
価格 本体3,200円+税
C-CODE 0021
ISBN 978-4-939042-95-9
サイズ A5
ページ数 404頁
発行年月日 2014年3月20日
発行所 株式会社アットワークス
http://atworx.co.jp/index.html
https://www.facebook.com/atworx2001

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予告: 伊藤禎樹『伊勢湾地域古代世界の形成』

伊藤禎樹『濃尾地方の弥生文化の形成―地域文化の形成―』(考古学連続講座第2回)、立命館大学考古学研究会、1978年頃。
▲ 伊藤禎樹『濃尾地方の弥生文化の形成―地域文化の形成―』(考古学連続講座第2回)、立命館大学考古学研究会、1978年頃。

伊藤禎樹さんの著書『伊勢湾地域古代世界の形成』の今月下旬刊行が、版元であるアットワークスのホームページFacebookで、2月25日にリリースされた。これを受けて私も、急ぎツイートした。


地域における縄文と弥生の「闘争」を展開した、写真の書も収められている。

貝田町式土器内部にみられるこのような雑多な要素を包括していく方向が進行すれば、新しい地域文化の形成がおこなわれた筈であるが、畿内的弥生文化が後期に進入して独自な地域文化の形成は阻止され、畿内のコピー文化に堕落した高蔵式が成立する(1)

詳しくは、アットワークスのホームページ等で。
私からは、刊行後にあらためて。

  1. 伊藤禎樹『濃尾地方の弥生文化の形成―地域文化の形成―』(考古学連続講座第2回)、立命館大学考古学研究会、1978年頃、3折右頁。
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