吉田富夫氏没後50年❖吉田氏関連最新論文2編

名古屋の考古学者、吉田富夫氏に関する、最新の論文2編を紹介します。

▌犬塚康博「吉田富夫の西志賀世界」

この論文は、吉田富夫氏にあらわれた考古学の近代を「西志賀世界」と呼び、地域が考古学的に──その物質ではなく精神において──いかに生きられたかを考える試みです。

1982年に展覧会「吉田富夫コレクション」を企画・実施し、これを発展させ1988年には、他館に先駆けて地域考古学史の展覧会「考古学の風景──名古屋における発見と調査あゆみ」を世に問い、驚きをもって迎えられた経験をもつ筆者による、最新の考古学社会学、考古学人類学の成果です。新しい聴き取り事実や、未発表の情報も盛り込まれています。

【内容】
まえがき
1 始まりの「揚戸」──志賀公園遺跡
 揚戸、貝塚、船人作
 揚戸墓地の六地蔵石仏
2 終わりの「船人夫」──堀越町遺跡
 城北新町遺跡
 堀越町遺跡
3 海人への想像力──「一連の貝塚」
 船人夫町貝塚、上更通交差点付近の貝塚、則武向貝塚
 海人への想像力
 西志賀世界の重層性
4  西志賀世界の地誌
 中心
 
 
 西
 
5 名古屋の風土論
 三区分
 西と低地
あとがき

図説明

▌犬塚康博「吉田富夫の遺跡公園論と博物館論」

これは、同じ筆者による博物館史研究の論文です。1970年に発表された吉田富夫氏の「埋蔵文化財のはなし──歴史のなぞとその解明──」を取り上げ、そこで披露された遺跡公園論と博物館論について、50年後の視線で分析・評価しています。

近代日本と満洲国の博物館史を学究してきた筆者だからこそ可能となった、皮相的でなく、単なるガイドでもない専門的態度が、吉田氏の仕事を博物館史に正しく位置づけています。

【内容】
はじめに
 失望の検見塚
 希望の検見塚
1 吉田富夫の遺跡公園論
 見晴台遺跡の遺跡公園論
 遺跡公園論と博物館論の構造化
2 吉田富夫の博物館論
 吉田富夫と博物館
 博物館の公開・教育機能
3 「禁止するのでなく」と「こわれたら、くっつければいい」
 「禁止するのでなく」「自由に」
 「丁寧に丁寧に」と「無造作に」
4 博物館以前から博物館史へ
 博物館以前の博物館実践
 博物館史のなかの吉田富夫
おわりに

【両論文の掲載書】
『地域世界』2
2021年10月1日刊
LOCI発行
A5判、本文54ページ
定価750円(本体681円+税)
ISBN­­978-4-9912051-1-8
LOCIのホームページから購入できます。

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